糖尿病網膜症
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は糖尿病に関係してあらわれる病気です。糖尿病には合併症がいくつもありますが、糖尿病腎症、糖尿病神経症とともに三大合併症と呼ばれているのが糖尿病網膜症です。
糖尿病による目の病気には、網膜症・白内障・緑内障・虹彩炎・感染症等があり、中でも糖尿病網膜症が数多く見られます。糖尿病になって5年で40%の人が糖尿病による目の病気を起こすともいわれています。糖尿病による目の病気では失明に至ることもあります。
糖尿病は血管がつまっていく病気であり、全身的には心筋梗塞・脳梗塞等を起こすと言われております。また、糖尿病の影響で網膜の組織がダメージを受け、視力が低下します。
糖尿病は、血糖値の上昇が続く生活習慣病で、毛細血管に大きな負担をかけ続けます。眼底には、心臓や脳の血管よりかなり細い血管があります。高血糖の悪影響を受けやすい場所であり、血管が詰まる・出血するなどを起こしやすいとされています。
はじめに、目の底の細い血管がつまり網膜に出血や腫れ(浮腫)を起こします。その後、詰まって血管が機能しなくなると酸素や栄養素が不足するため、新生血管というもろい血管があらわれより出血を起こしやすくなり、視力の大幅な低下を招きます。さらに、進行すると眼内に出血(硝子体出血)・網膜剥離等を起こしさらに視力が低下します。
眼科検診を定期的に受ける方が少なく、日本の中途失明原因では糖尿病網膜症が上位にあります。まず糖尿病と診断されたら半年に一度程度は眼科の検診をおすすめします。見えなくなってから受診されると手遅れになることもあるので早期発見が重要です。適切な治療を受ければ糖尿病網膜症の進行を止めることができます。
糖尿病網膜症の治療は、しっかりした血糖コントロールを行うことです。血糖コントロールを行っても糖尿病網膜症が進行するならレーザー光凝固術が必要となります。レーザー光凝固術をしても進行するようなら手術が必要となることもあります。
糖尿病網膜症は、進行状態によって3段階に分けられ、治療法も異なります。また、視力に大きな影響を与える「糖尿病黄斑浮腫」は、3段階すべてであらわれる可能性があります。
血糖コントロールで改善できることもありますが、自覚症状がほとんどありません。そのため、定期的な眼科検診を受けることが重要です。糖尿病網膜症の初期は、網膜の血管壁が盛り上がる血管瘤、小さな出血を起こしている程度であり、血管から血液成分が漏れている状態です。
網膜の血管が広範囲に閉塞している状態です。酸素や栄養素が行きわたらなくなるため、新生血管という、もろく破れやすい血管ができ始めます。糖尿病網膜症の中期は、かすみ目などの自覚症状があることもありますが、全く症状があらわれない場合もあります。そのため、できるだけ早く適切な治療を受けることで進行を止める必要があります。
糖尿病網膜症が進行すると、新生血管が破れて硝子体出血を起こし飛蚊症や急劇な視力低下を起こすことがあります。繊維状の膜である増殖組織が網膜を引っ張って網膜剥離を起こすと、視野を大きく欠損させてしまうこともあります。視力を少しでも残すために、できるだけ早く紹介させていただき手術などを受ける必要がある状態です。
網膜中心部には、黄斑というものを注視する際に用いられる場所があります。糖尿病黄斑浮腫は糖尿病の高血糖によって黄斑がむくむ病気で、視界がぼやける、見ているものがゆがむ、暗く見えるなどの症状が起こります。糖尿病の合併症以外でも黄斑浮腫が起こることがあります。
特に、ぶどう膜炎や網膜静脈閉塞症などがあると網膜や黄斑のむくみを起こしやすく、発症リスクが上がります。むくみが続くと黄斑の神経が障害を受けて、視力や視野に障害が現れます。
糖尿病の診断を受けたら、必ず半年に1度の頻度で眼科検診を受けてください。初期に発見できれば、食事や運動などによる血糖コントロールで進行を抑えることも可能です。それ以上に進行してしまった場合は、レーザーによる網膜光凝固術で新生血管の発生を抑制します。さらに進行して硝子体出血や網膜剥離、黄斑部の牽引などが確認された場合には、硝子体手術が必要になります。外科的治療が必要な場合は提携病院へご紹介させていただきます。
糖尿病網膜症の治療は、症状の悪化を防ぐために行われ、完全に治すことのできない病気です。
治療は、進行具合によってさまざまです。
糖尿病自体の治療と同様、血糖(血液中の糖分量)をコントロールすることが重要です。
新生血管の発生を防ぐために、「レーザー光凝固術」が行われます。
併発した網膜剥離の外科治療などが行われます。
抗VEGF薬の硝子体注射などをおこないます。